環境NGO「350.org」。大手7金融機関の温暖化投融資等を問う質問への回答を公表。三井住友銀行は「気候変動の情報開示を検討中」と回答。りそな、ゆうちょは無回答(RIEF)
2017-10-06 21:52:24
国際環境NGO「350.ORG」の日本支部(350.org Japan)は先月、日本の大手7金融機関に対して、地球温暖化対策のパリ協定と整合する投融資活動を問う共通質問状の回答結果を公表した。この中で、三井住友銀行が「パリ協定を踏まえた、金融機関としての気候変動に関する適切な情報開示について検討してい る」と回答した。回答は7機関中5機関からで、りそな銀行とゆうちょ銀行は期限までに回答しなかった。
350 Japanは7金融機関の預金者1000人分以上の署名(預金者の想定預金額は33億円強)を元に、「預金者の意思」を束ねて各金融機関の対応を聞いた形をとった。http://rief-jp.org/ct1/72955
各金融機関への共通質問は①化石燃料及び原発関連企業・事業を含むESGリスクが高い分野への投融・融資 の規模・資産額を開示すること②パリ協定を目標に、科学的な知見と整合する投融資方針 を策定し、投融資先企業の温室効果ガス排出量削減目標を達成するまでのロードマップを示し、その実行を宣言すること③2020年までに国内外の化石燃料および原発事業への新規投融 資を凍結し、それらの資金を再エネ、省エネ、社会 貢献に積極的な企業などに回すこと――の3つの内容。
各金融機関の答えが全体として一般論にとどまる中で、三井住友銀行は①について「クレジットポリシーやエクエーター原則に則り、環境に著しく悪影響を与える懸念が ある事業資金への与信を禁じている」と説明するとともに、「気候変動に関する適切な情報開示を検討中」と回答した。
同行が情報開示に前向きな姿勢を明かした背景には、先に金融安定理事会(FSB)の気候財務情報開示タスクフォース(TCFD)が、気候変動関連の自主的な情報開示を求める勧告をまとめたことがあるとみられる。
TCFDの報告公表に合わせて、世界の100を超す企業のトップ経営者が報告を支持する共同声明を出し、その中にCitigroupやHSBC、Bank of Americaなどの欧米金融機関も並んだ。だが、日本の金融機関はゼロ。「どの日本勢が名乗りをあげるか」との関心が出る中で、具体的な動きをみせたといえる。http://rief-jp.org/ct6/70939
またみずほ銀行も②に関して、「投融資先企業における温室効果ガス排出量削減の目標は設定していないが、投融資先の一部にお いて温室効果ガス排出量等を算定し、開示している」ことを強調した。
③については、各機関とも「世界の再エネの普及を推進 、グリーンボンド発行で、グリーンプロジェクトへの融資に貢献している」(三菱東京UFJ銀行)「これまでの再エネ普及事業に、引き続き取り組み貢献していく」(三井住友銀行)などと、再エネ投融資への積極的な姿勢は示した。だが、化石燃料・原発向け投融資については一切、答えなかった。
要請書と署名の提出先は、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行、ゆうちょ銀行、農林中央金庫の各金融機関。三井住友信託銀と農林中金は、質問に直接答えず「CSR報告書を参照」などの内容にとどまった。ただ、三井住友信託銀は350 Japanとの会合の開催を了承したという。
350 Japan代表の古野真氏は、「7行中5行より要請書への回答を得られたことは銀行の対応の向上を示すファーストステップだと思う。しかし、投融資先企業におけるCO2排出量の情報開示や削減目標、そして地球の気温上昇を1.5〜2度未満に抑える目標に整合した投融資方針の策定などの要請事項に対してどの銀行からもまともな回答は得られなかった」と批判している。
また、欧米の大手銀行の多くが預金者や投資家の声に応える形で、パリ協定に整合した投融資方針やモニタリング体制の策定、石炭関連企業やオイルサンド事業棟への投融資の抑制方針を打ち出していることに対して、「日本の銀行がどれほど遅れをとっているかが浮き彫りになった」と指摘した。
350 Japanは、11月6日からパリ協定採択2周年の12月12日まで、今回の署名に賛同した預金者とともに気候変動問題を悪化させる化石燃料やリスクの高い原発にお金を流していない「地球にやさしい銀行」にメインの預け先を乗り換えるダイベストメント・キャンペーン「レッツ・ダイベスト」を展開するとしている。